前置き
日本人の海外渡航・海外留学は年々増加しています。留学の渡航先で人気No.1はアメリカ。その後、オーストラリア、カナダ、イギリスと続いていきます。中でもオーストラリアは、留学産業拡大に国をあげて取り組んでおり、2016年以降日本人留学生の数は大きく伸びています。ここで新たな施策として、「サードワーキングホリデー」制度が誕生を予定しています。 サードワーキングホリデーとはどういったものなのか?今回はオーストラリアのサードワーキングホリデーについて、まとめたいと思います。
目次
ワーキングホリデーとは
ワーキングホリデーは、ワーキングホリデー(Working Holiday)の略です。ワーキングホリデー制度は、二国間において、各々の国や地域が相手国の青少年に対して、文化や生活様式を理解する機会を提供するために、一定期間の休暇を過ごす目的で設立された制度。 つまり、「日本以外の国での生活を経験するための若者に向けた制度」ということです。現在日本は、オーストラリア、カナダ、イギリスなど世界21か国とワーキングホリデー協定を結んでいます。英語圏ばかりではなく、韓国や台湾などのアジア圏、フランス、スペインといったヨーロッパ圏など、ワーキングホリデー協定はさまざまな文化を持つ国と幅広く結ばれています。 オーストラリアは日本がワーキングホリデー協定を結んだ最初の国で、ワーキングホリデーが結ばれたのは1980年12月に遡ります。来年末にはワーキングホリデー開始から40年を迎える、日本とは歴史のある国。オーストラリアは英語圏で、日本との時差も少なく、教育水準と治安が良いことから、日本人のワーキングホリデー希望者から最も人気のある国です。
ワーキングホリデーでできること
ワーキングホリデービザで滞在できる期間は、どの国も基本入国日から最長1年間です。※オーストラリアは例外あり。 滞在期間は現地で普通に暮らすことができるので、語学学校に通って勉強するも良し、仕事を見つけて働くことも良し、ホームステイしても良しで、どこの都市にどのように過ごしていても問題ありません。 ただし、国によって学校に通う期間や、同じ雇用主の下で働ける期間に決まりがあるので、ルールを確認の上、プランを決めることが必要です。
オーストラリアのワーキングホリデーのルール
就業(勉強)
オーストラリアでは最長17週間(約4か月間)まで、就業が可能です。オーストラリアには語学学校以外に専門学校や大学もあり、日本人も進学が可能ですが、17週間で満了するコースは基本的にありません。ですので、勉強は語学学校に通うことが一般的です。 語学学校といっても、一般英語クラスのほかに、ビジネス英語やバリスタコースなどさまざまコースがあるので、選択肢が限られているわけではありません。もし語学学校に通ってみて、もっともっとオーストラリアで勉強がしたい、と思った場合は、就業専用の「学生ビザ」に切り替える必要があります。 ブリスベン、ゴールドコースト、ケアンズのあるクイーンズランド州は、年間を通じて温暖な気候で、マリンスポーツが盛んなエリアなので、ダイビングなどの資格取得のサポートをしている団体があります。そういったところは就業とは異なるので、期間を気にせず自由に参加が可能です。
就労(仕事)
オーストラリアでは同一雇用主の下で最長6ヶ月間まで、就労が可能です。同一雇用主の元でなければ再度仕事をして問題ありませんので、すぐに次が見つかれば、実際は滞在期間中ずっと働くことができます。 仕事の選択肢は広く、日本でできる仕事(レストランスタッフや販売員など)は経験と英語力次第で、同じようにオーストラリアでも仕事に就くことが可能です。現地には日本人が多く滞在しており、日本人経営のレストランや美容室が多くあることから、専門スキルを持った日本人の募集もよく見かけます。 自由に過ごして良いのがワーキングホリデービザですが、就業や就労に特化したビザではないので、就業・就労に期間の制限が設けられています。なお、ワーキングホリデービザは1人につき1回のみ発行されるビザです。オーストラリアのワーキングホリデービザは取得から1年以内の入国がビザの有効期限なので、とりあえず取得しておいて、2年後3年後にタイミングが来たら使う、ということはできません。
オーストラリアのワーキングホリデーの募集要項
年齢
18歳以上30歳以下(30歳は申請可能で、渡航時に31歳になっていても問題ありません)
申請料金
450オーストラリアドル。約36,000円(1オーストラリアドル80円換算)
申請方法
オンライン上で行います。申請に必要なものは、パソコン・パスポート・クレジットカードです。パスポートは滞在期間中に有効期限が切れてはいけませんので、有効期限が近くなっている場合はビザ申請の前にパスポートの更新手続きが必要です。なお、クレジットカードはVISAカード1枚あれば問題ありません。
ワーキングホリデービザの発給数
イギリスやカナダなどでは、ワーキングホリデービザの年間発給数に上限を設けており、ビザが取得できるかは抽選次第としているところもありますが、オーストラリアのワーキングホリデービザは発給数に制限がありません。 犯罪歴や健康上に問題が無ければ、オーストラリアのワーキングホリデービザは基本的に発給されます。早ければ即日、遅くても数日でビザが下りるケースがほとんどなので、ビザ申請は焦る必要はなく、渡航日が決まってからでも十分間に合います。ただ、ランダムで健康診断の受診を要求される場合がありますので、渡航日の1か月前には済ませておきたいところです。
注意事項としては、年齢や健康状態が問題なくても扶養家族同伴の渡航は認められていません。あくまで申請者専用のビザとなります。なお、オーストラリアのワーキングホリデービザを申請、利用するにあたり、海外保険への加入は義務付けられていません。 海外保険は年間で10万円もしくはそれ以上の費用となるので、渡航のために節約したいと考える人にとっては大きな選択となる部分です。日本もそうですが、オーストラリアの医療機関に保険無しでかかるのは非常に高額となります。
普段医者にかかることが無い健康な人でも、慣れない環境で体調を崩してしまうことはめずらしくありません。現地で引いた風邪に日本の常備薬はあまり効果が無いこともあるので、費用がかかったとしても、いつでも病院に行ける安心感はあった方が良いかと思います。 プランによってカバーされる範囲に違いはありますが、風邪で病院に通うくらいであれば、ワーキングホリデーでの海外保険は診察料や薬代の実費清算は不要です。もし保険に加入していない状態であれば、1回につき100ドル以上の清算が想定されます。
セカンドワーキングホリデー、サードワーキングホリデーとは
ワーキングホリデー協定国によって細々ルールが違う中、ほかの国には無いオーストラリア独特のワーキングホリデービザ制度として、「セカンドワーキングホリデー制度」があります。セカンドワーキングホリデーは2回目のワーキングホリデー、つまり、通常最長1年間の滞在のワーキングホリデービザに、プラス1年間の滞在が認められたものです。 ワーキングホリデービザで渡航した1年間の間に、オーストラリア政府が定める季節労働に3ヶ月間従事することで、セカンドワーキングホリデーの申請資格が得られます。オーストラリアは2年間滞在する選択肢もあることが、ワーキングホリデー渡航先の人気を得ている要因でもあります。
2018年11月、オーストラリア政府はワーキングホリデービザでの滞在期間を最長2年間から3年間に延長する「サードワーキングホリデー制度」を発表しました。セカンドワーキングホリデーで滞在している時に、季節労働に6ヶ月間従事することで、サードワーキングホリデーの申請資格が得られます。 サードワーキングホリデーの申請開始は2019年7月~となるので、現在すでに条件を満たしている人でも、まだ申請ができる状態ではありません。
セカンド、サードワーキングホリデーのビザ申請は、最初のワーキングホリデービザ申請の時と同じように、同じ条件で進めていきます。 つまり、ビザ申請費用は450ドル。セカンド、サードの申請をする時それぞれ必要になるので、サードワーキングホリデーまでする人は、合計3回1,350ドルを支払うことになります。ビザの発給数の上限はありません。 申請はオンライン上で行います。申請時に必要なものは、パソコン・パスポート・クレジットカードです。ここで注意点その1は、セカンドもサードもオーストラリア国内から申請が可能なので、いちいち日本に帰国する必要はありません。ただし、セカンド・サードの滞在期間中にパスポートの有効期限が切れてしまう場合は、一旦帰国してパスポートの更新をするか、現地の日本大使館・領事館でパスポートの更新をしてからビザ申請を行う必要があります。
そして注意点その2が、年齢です。以前にオーストラリア政府が、ワーキングホリデーで滞在できる人の年齢を35歳までに引き上げることを協議していると報じられましたが、現状「18歳以上30歳以下」で変わっていません。つまり、30歳の時に、最初のワーキングホリデービザで渡航した人の場合、サードワーキングホリデーは申請の対象外ということです。
また、現在セカンドワーキングホリデーで滞在中の人で年齢が若い人も、季節労働をしていない状況ですでに滞在期間を6ヶ月以上過ぎていたり、6ヶ月以上季節労働をしているが、適用開始の2019年7月に31歳を迎えてしまう人は、現状ではサードワーキングホリデーの申請は対象外になってしまうでしょう。
※オーストラリア政府の方針は変更が多いので、7月までになにか新たな発表があるかもしれませんが。 29歳でファーストワーキングホリデー(季節労働3ヶ月)→30歳でセカンドワーキングホリデー(季節労働6ヶ月。31歳になる前にサードワーキングホリデー申請)→31歳でサードワーキングホリデーが現状でのギリギリラインと考えられます。
季節労働とは
季節労働は、よくファームジョブと言われますが、農業、酪農、畜産、漁業、林業のことを指しています。
仕事内容、給料について
一般的に多くの人が経験するのは農業(畑仕事)で、指定地域へ行き、住み込みで野菜や果物のピッキング(収穫)や、工場内でのパッキングを行います。 主に男性はピッキング作業、女性はパッキングになる傾向がありますが、場所や収穫するものによっては女性がピッキングしていることもめずらしくありません。当然給料が発生しますが、ピッキングは歩合制、パッキングは時給制を取っているところが多いことが特徴です。
農作物は基本的に暖かい時期に育つので、作物が多く仕事が多い時期=稼げる時期は求人の競争率が上がります。誰か現地で働いている人の紹介でも無い場合は、行く前に仕事を決めた状態で現地入りすることは難しく、基本的には到着した人順。早い者勝ちです。タスマニアでのピッキングは稼げると評判で、非常に人気があることで知られています。
季節労働は現地に滞在している期間ではなく、実際に働いた期間がカウントされるので、人がいっぱいで仕事ができない環境にいても意味がありません。働く以上、給料面などの条件はもちろん重要なポイントですが、ビザの取得を最大の目的とするなら、安定して仕事があることを優先するべきと言えます。 年間を通じて温暖な気候のクイーンズランド州には特に仕事が多くあるので、6ヶ月間のように長期的に仕事が必要な場合は、こういった仕事が多くあるエリアに滞在することが無難でしょう。 力もスピードも求められる炎天下の中での農作業は、身体が慣れるまで容易なものではありません。農作物のことを考え、天候が悪くても早くピッキングした方が良いと判断された場合、雨風の中で畑に出ることもよくあります。 厳しい環境の季節労働は、オーストラリア人労働者が確保できず、人手不足の現状です。ワーキングホリデービザで滞在している世界各国の留学生たちによって、この人手不足を補っています。サードビザの申請条件は、セカンドビザで滞在中に季節労働に6ヶ月間従事することなので、農作業者の更なる確保がしたい思惑があることは言うまでもありません。
まとめ
いかがでしたか。6ヶ月間もの間、季節労働を続けることは容易ではありませんが、共同生活を通じて新たな日本人や世界各国の人と出会う良い機会、場所と考えれば、得られるものはビザだけではありません。 さらに、季節労働は稼げる・貯蓄ができることも大きなメリットとして存在しています。給料は一概には言えませんが、1週間に1,000ドル稼げるところはいくらでもあります。毎週そこまで稼げないにしても、安定して働き続けることができれば、6ヶ月間で1万5千ドル程度(日本円にして120万円程度)の資金を作ることも目指せます。 そこまでの資金があれば、サードワーキングホリデーの時に出来ることの幅が広がり、それまでの滞在よりさらに充実した1年を過ごすことも可能ではないでしょうか。